この本は、多くの海洋歴史小説群の「エッセンスの通史」(川勝平太氏)と位置づけられるべきもので、各小説の時代背景等を知ることができる。また、当時の船や地図など、数々の資料や図版が収められており(当初のNHKテキストに、最も多く掲載されている)、各小説をより深く読むうえでも大いに役立つものである。
白石さんは、1931年釜山で生まれ育ち、中学2年で終戦を迎えて引き揚げられた。柳川の伝習館中学を経て、佐世保第2中学に編入、学制改革によって佐世保北高生となり、1950年に2回生として卒業されている。
高校時代には読書に没頭されていたようで、「佐世保北高創立30周年記念誌」(1979年)に「混乱期」というエッセイを寄せておられる。
「私は高校時代は小説ばかり読んでいて、しかも徹底した夜型だったから、朝は遅刻の連続、すでに授業のはじまった教室にこそこそしのび込んでいた記憶がある。『お前、いくらなんでもひどかぞ』と友人に注意され、深く反省して、それ以来遅刻しそうな日は休んだので、おそらく欠席率は校内でも、1,2位だったろう。」
2004年9月20日に逝去。二人のご子息(白石一文さん・白石文郎さん)も作家である。 |