飲み慣れないカクテルを飲んだため(?)にガールフレンドを失った主人公の恋人探しの過程を、巧みな伏線を張り巡らせながら読ませてくれる。恋人(?)の「失
踪」をおうミステリー仕立てのプロットは実にスリリングだが、5年後の彼女との再会の場面で、意外や意外、間の抜けた男の”勘違い物語”へと変わってしまうのには驚かされる。
最後にして著者は、恋人(?)より仕事を優先したためにすれ違いになってしまった結末を用意する。もとよりこのカップルの間に恋人たりえる精神的な絆が不在で
あったためにすれ違ったという真実を鋭く読者に突きつけるのだ。絆の不在は、過去、確かに存在したはずなのに気にもとめなかった目の前の「事実」が、現在にして
輪郭を伴った「真実」として晒される。過去は時々このように突如として顔を出すものだ。 |