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佐世保在住の小説家、佐藤正午さん(26回生)。 次々に話題作をうみだしている実力人気ともに兼ね備えた作家だ。中でも「ジャンプ」は映画化された。(編集部)

 
     
 

佐藤正午著 「ジャンプ」  光文社文庫・本体590円

 
         
 
 

 飲み慣れないカクテルを飲んだため(?)にガールフレンドを失った主人公の恋人探しの過程を、巧みな伏線を張り巡らせながら読ませてくれる。恋人(?)の「失 踪」をおうミステリー仕立てのプロットは実にスリリングだが、5年後の彼女との再会の場面で、意外や意外、間の抜けた男の”勘違い物語”へと変わってしまうのには驚かされる。

 最後にして著者は、恋人(?)より仕事を優先したためにすれ違いになってしまった結末を用意する。もとよりこのカップルの間に恋人たりえる精神的な絆が不在で あったためにすれ違ったという真実を鋭く読者に突きつけるのだ。絆の不在は、過去、確かに存在したはずなのに気にもとめなかった目の前の「事実」が、現在にして 輪郭を伴った「真実」として晒される。過去は時々このように突如として顔を出すものだ。

 
         
 

 つまり、本作は男と女の意識のズレによる不運を描いているのであり、男の単純さ を浮き彫りにすることで、自分の選択に決着をつける女の潔さや逞しさを際立たせて いるのだ。でもまあ、主人公をマヌケな鈍感男と責める気は毛頭ない。こんなものだろうな あ、人生って……。”タラレバ”を言っても仕方がないのに、これが運命さ、と 愚痴ってしまう。

 
     
 

 ともあれ自分で選んだ人生だ。過去へ「ジャンプ」するのもいいが、必ずや戻ってきて欲しい。あなたが現在ここに存在する理由をかみしめて……。

 
 
(文責・桑島まさき)
 
     
   
     
   
     
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