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 人気作家・佐藤正午さん(26回生)は、依然として佐世保に住みながら幾多の話題作を発表し続けている。今年1月に出された新作小説を紹介したい。(編集部)

 
     
 

佐藤正午著 「5」  角川書店刊・本体1800円

 
         
 
佐藤正午著「5」
 

 タイムスリップを扱った「Y」、失踪を扱った「ジャンプ」。使い古されたモチーフにもかかわらず、著者の手にかかるとストーリーは重層的に展開し、ミステリアスな色合いを帯び、多くの恋愛小説と一線を画した作品となる。

 ストーリーテラーとしてあまたの恋愛小説を送り出してきた著者の最新作は、7年ぶりになる長編恋愛小説として話題を呼んでいる。

 今回、著者が試みたモチーフは、超能力。しかも、不可思議な能力の“流れ込み”だ。恋愛小説ではないのかというとそうではない。「ファイブ」と読んでしまいそうだが、「ご」というシンプルにしてちょっと変な(?)タイトルからして意味深だが、その理由は中盤から理解できるようになっていて、ズルズル引き込まれる。

 
         
 

 倦怠期に入った夫婦、中志郎と真智子はバリ島を訪れる。子供はなく、心はすっかり離れしてしまい、妻は絵に描いたようなプレイボーイの作家、津田伸一と愛人関係にある。しかも、津田はサイトで知り合った女たちと次々と情事を楽しむ軽薄な男で、真智子は愛人の一人に過ぎない。夫婦の愛情は完全に冷めていた。

 ところが、訪れたバリ島のホテルのエレベーターの中で“ある女”と手と手が触れたことで、中志郎に確かな変化が現れる。妻と出会った頃の新鮮な気持ちや情熱が蘇り夫婦仲が恋人時代のようになるのだった……。

 物語はこの中志郎と謎の女の物語かと思わせておいて、チョイ悪オヤジの津田と女たちとの物語に変わっていき、読者をだまし、混乱させ、楽しませる。

 
     
 

 どんなに愛し合ったカップルでも月日を重ねるとその情熱は色あせていく。一緒に感動した日のことを忘れ、自分のために泣いてくれた彼(彼女)の顔や交わした言葉さえも忘れてしまうものだ。だがそれは至極当然のことであり罪の領域ではない。

 失った日々の情熱や新鮮な気持ちを取り戻す媚薬や力を備えることができたら……。恐らく離婚率は格段に減少するだろうし、少子化といった問題も激減することだろう。だが、残酷なことに時間は前にしか進まず、愛の記憶も日々風化してゆく。作中語られているように「冷めないスープはない。かならず冷めるもののことをスープと呼び愛と呼ぶのだ」。大方の人はその色あせた記憶や情熱の代わりに、平穏な日々と重厚な絆というものを育み人生に折り合いをつけていくしかないこと、又はその貴重な意味を知っている。

 著者自身のこれまでの恋愛小説と違うのは、恋愛小説の形をとりながら、人間の〈記憶〉とその時々の〈感情〉の在りようを見つめている点だ。中志郎の選択は正しかったかどうか。時間の残酷さを見せつけられた気がするが、それでも人は進まなければならない。生まれてきたからには。考えさせられた!

 
 
(文責・桑島まさき)
 
     
   
     
   
     
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