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佐世保北高
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ま ぼ ろ し の 表 彰 状 ・・・JRCの残り香を探して・・・

 
     

中  元  静  毅

   
     
 

 私は、本校に赴任した昭和51年から55年4月に「北高新聞」の発行責任者に任ぜられる迄の4年間、JRC同好会の顧問を勤めた。JRCは数年前までボランティア同好会と改称して細々と存在していたが、現在は部員も居なくなったようである。

 当時のJRC活動で特に印象に残っているものの1つは、任期中の3年目に本校が県北地区当番校になり、大々的にトレーニング・センター(略称TC)を企画・運営したことである。もう1つは、本校JRC活動の一環として十数年来続いていた八幡坂周辺の路上や側溝の清掃作業の噂が、「小さな親切運動」県支部長の耳目に止まり、茅誠司会長名の表彰状を校長室で戴いたことである。

 その頃のJRCは隆盛を窮めていたと思う。多い時には部員が30名もいた。JRCは、ジュ ニア・レッド・クロス(青少年赤十字)の略称で、赤十字の生みの親デュナンの精神を各学校で 具現しようと、生徒達はひたむきに行動していた。

 
梟の目
   
     
    平たく言えば、「気づき考え行動する」というのがJRCの目標であり、号令はしても号令さ れない生活態度を身につけるため、いろんな討議や行動、宿泊訓練をしていた。その背後には、青奉(青年奉仕団)が付いてグループのリーダーになる勉強を援助し、頂点は日赤県支部長に繋がっていた。

平和な世の中といえども、デュナンが唱える「苦痛からの解放」がベースにある以上、非常時を想定しての救急法の学習ということが、常に部員達の念頭にあったように思う。人工呼吸技術の習得、自らの献血の実行と校友への呼びかけ、老人ホームや養護施設への慰問、公園や校地周辺の清掃等が主な活動であった。1泊2日で実施される恒例のトレーリング・センターは、学校生活で良いリーダーをつくることを目標に、顧問と青奉の指導者が訓練内容を案出し、事前に部員に周知徹底させて合宿に臨んだ。

 良い学校というのは、有名大学への進学者が多いからとか、部活動の優勝旗や表彰状が幾つもあるからではない。この学年には、このクラスにはあの子が居るから、あの生徒の働きがあるから立派な学年や学級になるんだと言っているうちは、本物ではない。絶えず誰かがいつも見えない所で、縁の下の力持ちになって集団を支える者が多い学校こそ、すばらしい学校である。
 そういうことを私は力説し、また行動を通して、そういう方向に生徒を駆り立てていたように思う。岡山県のある小学校の校長は、次のような言葉でリーダー養成の必要性を説いている。
  「パンをおいしくふくらませるには、イースト菌の働きがなくてはならない。イースト菌の入っていないパンなど、まずくて食べられないだろう。グループや学校が、なごやかな雰囲気をかもして、おいしいパンのようにふくらむには、イーストのような隠れたリーダーの働きが必要になってこよう。‥…」
 
     
 

 私はある時、校長室に呼ばれた。前述した「小さな親切運動」県支部の方から表彰状を戴いてきたが、全校生徒の前で披露するか否かという相談である。T校長はJRCの良き理解者で、合宿の時も顔を出してくれたりしていた。私はちょっと躊躇して、決定を1日待ってくれるようにお願いした。 早速放課後、全部員が集まって、賞状を受けるかどうかの話し合いが始まった。赤十字の原則に肉迫する白熱した議論があった後、大多数の意見で皆の前では表彰は受けないとの結論に達した。

 結局、その賞状は翌日、校長室で私が立ち合って部長に手渡されたのみで、全校生徒の全く関知しないところとなった。曜日を決めて週2回、欠かすことなく十数年も清掃活動を続けたことは、驚嘆に値する。当時の校舎周辺の道路は、実にきれいであったと思う。

近年は地域清掃の日と銘打って、正課の授業をつぶしてまで、全学年で一時間足らずの作業をやっている。こっけいなのは、その様子を新聞社が写真入りで新聞に掲載することである。奉仕活動も、これ見よがしのヤラセと化し、各学校からわざわざ新聞社に連絡して記事にさせている現状に、私は昔日の感を深くするものである。

JRCは、今は絶えてない。しかし、賞状を皆の前で受けることを頑なに拒絶した、あの精神横溢な勤労の志士達は、今どうしているだろうか。まぼろしの表彰状のことが、しきりに思い出されて仕方がない。
 はっきりとは匂わなくとも、八幡台をかずかに吹き渡る校風には、彼等が残してくれた奉仕の香りが、少しでも混じっていると信じたい。

 
     
   

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