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宮古島で「紫匂う」を歌う 

 
         
 
10回生
 

中  島  眞  澄

 

         
     
 

 2005年5月、爽やかな風の吹き抜ける頃、東京にいる『ときの会』の幹事をしているY君とS君から嬉しい連絡があった。
 宮古島に行かないかとの誘いである。

 

 

 私たちの高校時代の同期会の本部は『ほくと会』と称し、東京周辺は前述のように呼称している。
 夫々の思いがあるので、それはそれで構わないが、九州では毎年11月に同期会を佐世保で開催し、4年に一度の全国規模の大同期会も佐世保に集まり、旧交を温める様にしている。

 

 

 

 

 

 今回の企画は、既に2〜3年前から始まっていた。
 というのは今から4年前、私たちの同期の猪須いすさんが、東京の新宿歌舞伎町の店【しんじゅく33(みみ)】を引き払い、宮古島で新たに店を開いた時から「行こうや」という声が上がっていた。
 『ときの会』のメンバーは自分たちの拠点を失い、意気消沈していることも風の便りに聞いていた。
 彼らばかりではない、多く佐世保の人びとも【しんじゅく33】に顔を出し、世話になる人も多く、佐世保出身の人たちの憩いの場所にもなっていた。
 さらには佐世保の人たちばかりか九州出身の人たちも多かったと聞いていた。
 彼女の去った東京で、多くの人が寂しがったと聞いている。私たちも上京すれば、同期の連中としばしの時を過ごすのも【しんじゅく33】であった。
 東京の面々は、久しぶりの佐世保弁で盛り上がり、歓談の一時を過ごしていた。

 

 

 

 

 

 私は彼女とは、幼・小・中学校・高校と同じコースを歩みながら、「男女七歳にして席を同じうせず」の古い格言の通り、ほとんど喋る機会はなく、私たち男子には高嶺の花のような存在でもあった。
 従って高校卒業後猪須さんがどうなったのか知る由もなかった。多くの同期の友は散り散りになって、社会の荒海に投げ出された。

 

 

 

 

 

 やがて、同期の夫々が高度成長の波の中にドップリ浸かり、多くの者が企業戦士として社会を相手に戦い、容赦なく時は流れていた。
 疲れた体を癒し、明日の気概を養う場が同期の者が集う【しんじゅく33】であり、さり気なく振る舞い、皆に接してくれる猪須さんがいた。その魅力こそ彼女の最大の武器であった。
 しかも、彼女の店【みみ】に集う一人一人を大切にするのも、彼女が多くの人たちに愛されてきた最大の魅力だったかも知れない。
 気がついてみれば、私たちは頭にめっきり白いものが混ざり、眉間の皺や目尻に老いを感じ、これからどう生きようか、という世代にさしかかろうとしていた。
 『今からどがんすっと』これは私たち同期会の還暦記念文集である。
 丁度、多くの同期の友が子育てを終え、各々の職場を去ろうとした時に、私たちはこれを出版した。
 その中にも情熱的な一文を猪須さんは寄せている。

 

 

 

 

 
 
     
 

 『ときの会』の誘いがあり、佐世保から私と食品会社を経営しているK君の2人、さらに太宰府にいるリタイア組のT君、九州からは3人が合流することになった。

 時は11月の初旬、2泊3日、東京からは20人のメンバーが参加した。
 空港には猪須さんが迎えに来ていた。
 久しぶりの再会である。
 少し痩せていたが、その容姿は以前と変わらず、喜びに満ちた表情を見せていた。
 連絡は時々していたが、彼女の周辺から仲の良かったY女史やF女史が他界しており、22年いた東京を去った理由の一つともなったと思われる。
 ホテルまでの道のりを、彼女の運転する車の中で、他愛のない会話を交わしながら、この人の逞しさを改めて見直すことになった。
 裸一貫東京に乗り込み、浮き沈みの激しいその世界で、多くの人たちと出会いながら持ち前の気の強さで、弱音も吐かずに泣き言も言わず、荒波を乗り切ったその強さはいったいどこから勝ち得たものであろうか。
 この人はこの歳で、新しく宮古島での夢に向かおうとしているのだ。
 『ときの会』の面々も到着した。幹事のY君やS君、参加者の一人一人と握手して再会を喜んだ。
 中には奥様を同伴した者やご主人を同伴した者、その人の家族や知人も混じっていた。

 

         
 

 宮古島の【しんじゅく33】は、彼女の生きる拠点になっていた。

 沖縄風と和風の魅力を兼ね備え、落ち着いた雰囲気で、お酒を飲み食事をする店であった。地域の人にもいい評判をとっていた。
 かつて仕事に熱中し、ギラギラした眼差しで日々の戦いに明け暮れ、心癒されていた懐かしい【しんじゅく33】で、いつまでも青春を語り、人生を語る。

 
宮古島の「しんじゅく33」で
 
         
 

 笑いが渦巻き、大声の歓談は絶え間なく続いた。猪須さんの作った沖縄の料理を貪った。
楽しい時間はあっという間に過ぎ、あの頃の教師たちを揶揄した歌、応援歌が延々と続くのであった。
 気がつけば、いつの間にやら夜の12時を回っていた。
 最後はいつも校歌『紫匂う烏帽子岳明けゆく明日空澄みて……』である。
 校歌はどんな時でも心を1つにする。
 母校を思う気持ちがそうさせるのか。若かった青春時代を彷彿とさせるかであろう。

 
 

 

 
 
 
     
  翌日は二手に分かれての行事が組まれていた。
 第1グループはホテルの中にあるゴルフコースで楽しむ者、第2グループは宮古島観光であった。
 11月とは言え、ホテルのプールでは泳いでいる人たちも多く、まさに宮古島は夏であった。
 私たち九州勢は宮古島観光に参加した。紺碧の海、珊瑚の海、水平線の彼方に広がる海、その海を糧にして人々は生きてきた。
 
     
   薩摩藩の苛酷な人頭税、サトウキビ畑、暑い太陽、島の悲しい物語、広々とした砂浜、久しぶりの語らいと、宮古島の大自然を心行くまで満喫したのは言うまでもない。
 ゴルフ勢も楽しんでいた。ゴルフに興味のない私に言わせれば、宮古島をじっくり見れる機会は滅多にないのだ。
 豊かな大自然と景観、島に住む人々とその暮らし、その島の歴史や風土を体で感じるのは、現地をしっかり歩くことが基本なのである。
  広々とした砂浜で  
         
 

 それにしても宮古島は貧しい筈なのに、道行く人も、街の人も、お店の人も明るさに溢れていると感じたのは、私ばかりではなかっただろう。

 
         
 

 夜の部は【しんじゅく33】の近くの居酒屋【郷家】で、沖縄民謡を聞き、沖縄料理をしこたま食べた。
 若い地元歌手のライブだ。
 それに合わせて皆で宮古島の踊りを、楽しく踊るのである。
 二次会は再び【しんじゅく33】で、昨日の宴の延長だ。
 話は留まる所を知らなかった。

 
宮古島の踊りにあわせて
 
         
 

 友の消息、体調や家族のこと、子どもの結婚そして孫のこと、さらには今の世に対する心配や憂いなど、時間はいくらあっても足りる筈もなかった。

 
 

 

 
 
 
     
 

 3日目の朝早く、東京組は再会を約束しながら宮古島を発った。
 九州組3人と岡崎市から参加していたN君は他の目的も持っていた。
 それは猪須さんの御母堂久江さんに会いたいと言うことであった。
 猪須さんの御母堂は、御夫君常四郎氏と共に、激動の戦後佐世保経済界を生き抜いた人でもあった。

 郊外の静かな佇まいの場所に猪須さんの家は建っていた。
 聞けば家のローンは猪須さん80歳まで組んでいると言う。
 御母堂は89歳にはなられていたが、意外と元気であった。
 老後を娘と2人、南の宮古島でのんびり暮らしておられるのだ。
 N君の父上は猪須さんのご尊父と懇意にしていた関係もあり、親しみの度合いが違っていた。 まさに自分の母親との再会のように喜んでいた。勿論御母堂も嬉しそうであった。
 K君もまた御母堂と因縁浅からぬ関係であると言う。私は佐世保戦後史の一面をぜひ聞きたいと思っていた。残念ながらそれは叶わなかったが。

 
         
   お昼をご馳走になり、猪須さんの家を後にした。猪須さんは空港まで私たちを送り、宮古島特産「海ぶどう」、「もずく」、「黒糖」を持たせてくれた。
 『さよなら、ありがとう』『また、会いましょう』 短い言葉の中に、これまで戦後の物のない時代を、生きてきた私たちだけが感じる心が流れているのだ。御母堂の長寿を祈ろう。そして強く逞しく、懸命に生きている猪須さんにエールを贈ろう。
  宮古空港で  
         
   また、今回の企画をしてくれた東京『ときの会』の幹事N君とS君、ご苦労様。そして同行した同期生諸氏、また、いつか会い『紫匂う 烏帽子岳 明けゆく明日 空澄みて 潮の音遠く 響きては 八幡台に雲ぞ湧く 青嵐に立つ北高校』を共に歌おう。  
     
 
(郷土雑誌・月刊 「虹」 20063 <九州公論社刊>より転載)
 
     
 
<転載にあたり、表現を一部修正させていただきました(編集部)。>
 
         
   
     
   
     
   
     
   
         
   
         


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