著者は、マスコミ業界で働きながら小説やルポを書きつづけ、「民主文学」などの雑誌に作品を発表している大浦ふみ子さん(本名:塚原頌子さん/12回生)。
大浦ふみ子著「女たちの時間」
日本民主主義文学同盟/発行 東銀座出版社/発売・本体1429円
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「女たちの時間(とき)」と「男たちの暦」を収録。主人公は女、男と違うものの、そこに描かれているのは、働く者たちが存在証明や生きがいを求め、職場の環境をよくするために闘う姿だ。<敵>は、陰湿なイジメだったり、執拗な退社勧告だったり、身体に害を及ぼすタバコの害だったりする。
私は女として、「女たちの時間」を興味深く読んだ。本書が刊行されたのは98年、つまり今から7年前で、著者は50代後半ということになる。しかし、物語を進める主人公、次子(52歳で胃がんの手術をおえて職場復帰したばかり)の闘志に敬意を払うかのように、あたかも虐げられる者の悲痛な思いを次子に託すかのように、その筆力は熱く溌剌としている。年齢を感じさせないエネルギーに満ちているのだ。プロだから当然だといえばそれまでだが。 |
術後、職場に復帰してみると、いきなり不要物扱いされ、「やるべき仕事がない」と言われ、陰湿なやり方で退社するように仕向けていく組織の男たちがいる一方で、次子を温かく励まし共に闘う同年齢の理枝のような同志もいる。若いながら年長者に敬意を払い、危険を承知の上で女性の地位と向上を訴えて次子に味方する亜由子のような女もいる。また、体制に媚びを売りさんざん次子を陥れる奈々のような女もいるのだが、その彼女に対して会社が下した結末は、してやったり!と言いたいところだが、組織の冷淡さを見せつけれゾッとする。
均等法が施行される以前に会社に入り、実力を充分に果たせなかった女子社員たちが年を経てつきあたる壁。それを、働く意志と女たちの連帯によって勝ち得た結末は、胸のすく思いで一杯だ。あなたは何のために仕事をしているのだろうか? そんな問いを自らに投げかけ問い直し、思わず襟を正したくなるような作品だ。
本著者には、他に、「火砕流」「長崎原爆松谷訴訟」[ひたいに光る星」(いずれも、青磁社)、「土石流」「匣の中」(いずれも、光陽出版社)などの著書がある。
(文責・桑島まさき)
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