事件を探るうちに“ある女”の存在が浮かびあがり、軍港都市・佐世保の歴史を語る際に忘れてはならない、貧しさのために強いられた女性の哀しい歴史が背後にあることを描く。同郷人として同じ女として、胸が締め付けられる思いを強くした。
ハードボイルド的なド派手なアクションシーンや男女の睦み合いのシーンなど、「土曜ワイド劇場」的なメリハリのついた展開で進み、とんとんと事件は解決するのだが、生涯でたった一人愛した男の子どもを密かに産み、陰ながら娘の成長を見守る女の健気さ、高潔さに比べ、男たちの見栄や俗っぽさが顕著だ。惜しいのは、事件の真相が案外わかりやすかった点だ。
そうは言っても、「セントラルホテル」、「西沢デパート」、「玉屋」など同郷人にはお馴染みの場所が出てくるのは嬉しい限りでワクワクして読んだ。そのうえ、被害者の坂口は、北高出身という設定になっている!
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