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「話し下手な私は、若い頃書くことが好きだった。」と語る28回生の今泉久美子さんは、現在、諫早市在住。 看護師として勤務した経験をいかして書いた、自伝的小説を紹介する。

 
     
 

相 田 久 美 著 「 天 使 の 贈 り 物 」

 
 

文芸社刊 ・本体1100円

 
     
 
天使の贈り物
 

 若い頃一度結婚に失敗した主人公、渡辺久子の再婚、出産、2人の子供の子育てに奮闘する日々、椎間板ヘルニア、腸閉塞(イレウス)、思わぬ妊娠、堕胎を余儀なくされた3番目の子供への自責の念、などが丁寧に描かれる。この世に生まれ落ちたかった子供(=天使)への哀惜の情を絡めて描く家族小説である本作は、一人の女性の選択と決断のルポルタージュといっても過言ではない。

 女なら誰でも心をいためる腹に宿った自分の子供を堕胎するか生かすかの選択。流産した人なら「あの時、あんな事をしなければ…」「天使は一生懸命にメッセージを送っていたのに…」と自分を責めるだろう。

 
         
 

 久子の場合、妊娠に気づかずに通院した病院でレントゲンを撮ったため胎児が被爆した可能性が高く、優生保護法によって堕胎が正当化される。法的には合法であり、産む側の意思によって堕胎か出産かの選択肢があった訳だが、それでも一方的に子供の生きる権利を奪ってしまった事に対する思いが彼女を苦しめることになる。

 言うまでもなく出産は、生まれようとする子供と送りだそうとする母親の共同作業だ。それなのに、母親は胎内にいる子供の内なる声に気づかず、被爆までさせてしまったという罪の意識だ。

 「障害者として生まれる可能性があるから」という理由はいかにも優性思想を肯定しているようで素直に頷けないが、子供を育てる側の苦労を思えば一概に侮れない厳しい現実であることは確かだ。

 身体的・精神的苦痛を乗り越えた後、家族に参入できなかった第3子の死に折り合いをつけるまでが、奇をてらわず素直な文章で紡がれていく。多くの女性たちの共感を得るに違いない女性の真摯な記録だ。

 
 
(文責・桑島まさき)
 
     
   
     

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