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  著者の瀬野精一郎さんは、2回生、長年、早稲田大学文学部教授を務められた歴史研究者である。瀬野さんは、「歴史の陥穽」(1985年・吉川弘文館)に続くものとして、論文以外のもの(研究余禄、随筆、編著書のあとがきなど、合計50篇)を収録して、1997年にこの書を刊行されている。

 
 

(編集部)

 
     
 

瀬 野 精 一 郎 著   「 歴 史 断 想 」

 
 

東京堂出版刊・本体1800円

 
         
 
瀬野精一郎「歴史断想」
 

 著者自身が、「私は子供の時から文章を書くことが好きであった。したがって私の場合、歴史家が随筆を書いたというより、随筆を書くことが好きだった者が歴史研究者になったという方が当たっているかも知れない」(はしがき)と述べておられるとおり、こなれた文章が多い。編集子のような門外漢にも、興味を持って読むことのできたものも多い。
 特に、著者自身が「敗戦に至るまでの15年間は、軍国主義一色の教育を受けることになった。・・・そのような戦時中と戦後との価値観の落差はあまりに大きい。そこで本書の中にも、私が戦時中に体験したことを具体的に叙述したものが含まれている。それは自ら体験したことを、歴史研究者として客観化して叙述してみたいと思ったからである。さらに私の叙述を通じて体験したことのない若い人達に、どれだけ正確に伝えられるかということに、歴史研究者として興味を有しているからである。」(はしがき)として記述されている部分は、たいへん興味深く拝見させていただいた。

 
         
 

 そのようなテーマの中から、3つほど紹介させていただく。

@「電気の定額制」
 戦前一般家庭の電気には、メートル制と定額制があった。前者は使用量に応じて支払う仕組み、後者は安い一律料金であった。そして、前者は一日中電気が供給されるのに対して、後者は夕方暗くなる頃から朝夜が明けるまでのみ供給された(なお、著者が昭和17年9月から昭和20年3月まで住んでいた対馬厳原町には、メートル制そのものがなかったという)。ラジオはかなり普及していたが、定額制の家では昼間はラジオが聞けないため、情報知識のうえで、メートル制の家とは格段の差が生じていた。

A「歩調取れ」
 著者は、「昭和13年に尋常高等小学校に入学したが、その後敗戦までの7年間、戦時色一色の教育を受けた。戦前の教育とひとまとめに捉えるのは、間違いではないか。昭和10年代の教育は、異質であった」旨を述べて、教師が生徒に「今何時だ」と問い、生徒が「非常時です」と答えたり、教師が中学で英語を学習する理由付けに「敵の捕虜を尋問するのに必要であるから」と説明したりしていたことを紹介している。

 また、著者自身が経験したこととして、昭和19年に入学した対馬中学校での経験が詳細に述べられている。当時、2人以上の生徒が並んで登下校する場合、2列縦隊で登下校せねばならず、その場合、2列縦隊の先頭に最上級生の指揮者が存在して、2列縦隊の指揮をとることに定められていたそうである。そして、登下校の際に、他の2列縦隊を追い抜くときは、縦隊の構成員がどうであるかによって、「歩調取れ」「歩調止め」、「歩調取れ」「頭右」「直れ」「歩調止め」の号令が厳原の道路上に乱れ飛び、間違った者は、後で上級生に説教されたり、鉄拳制裁を受けたりしたとのことである。
 著者は、2列縦隊で校門に入る際や校門を出る際の指揮者の号令も紹介しているが、正直言って、これらは編集子の理解を超えている。

B「航空補助燃料松脂の採取」
 著者は、昭和20年に島原中学に転校して敗戦を迎えた。敗戦当時、3年生以上は、川棚の海軍航空廠に動員されて魚雷の製造に従事していた。
 残された1、2年生は、麦刈りの手伝い、眉山の山麓に急遽造成された海軍の滑走路作りに動員されたあと、航空補助燃料としての松脂の採取作業に従事させられたという。そして、その中での中学生の悪智慧を働かせた「不正行為」が、ユーモアを交えて紹介されている。

 そのほかにも、「大正時代の談合」「寅年と千人針」「二つの時代に生きた人々」など、瀬野さんの体験を踏まえた数々のエッセイは、多くの人の興味を引くのではないだろうか。

 なお、瀬野さんの著書(共著)には、1998年に発行された「長崎県の歴史」(山川出版社)もありますので、興味をお持ちの方は、是非お読みください。

 
     

(文責・宮田 学)

 
     
   
     
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