団塊の世代だ。2007年の現在、熾烈な競争社会をいきぬき日本経済に貢献した企業戦士たちが大量に退職する。そして、それに便乗した諸々のビジネスが展開されている。少し前から団塊世代の企業戦士の生きにくさが目立っていたようだが、川野さんは同世代人として、「人をおしのけたりダマしたりすることを良しとしない教育を受けた世代だと思います。世の中を変えようという理想に燃える政治家もいないし、有名だけど金持ちもいないのが私たちの世代の特徴です」と語る。
高校時代をバラ色の人生と語る川野さん。医学の道へ進み、臨床の現場から研究者の道へきりかえたきっかけを「ダマされてそうなった」と笑って語る川野さん。巻物のように膨大な心電図を診て、病名を的確に判断する教授の姿に憧れ選んだ心臓の分野。アメリカで研究生活はハードで寝る時間もないほど。ここで分子レベルでの不整脈のメカニズムを解明。一躍時の人となる。日本のシステムとは何もかも違う自由なアメリカでの研究生活は充実していて日本に戻りたくないと考えたほどだった。
医療の話題になると、「日本の医療の崩壊は雪崩のように起こっています。医者の重労働・過労が問題ですが、それ以上に医師イジメは深刻で、仕事に誇りがもてなくなりつつあります。近い将来日本から優良な医者がいなくなることを心配しています」と俄然熱がはいる。「人間の心臓は結構丈夫にできていますので100歳位迄問題なく働きます。日々の生活習慣に気をつけていれば、特に再生医療の必要性は低いと思います」さらに「これからは100歳以上まで生きる時代です。アメリカではJFKのお母さんも100歳の誕生日を元気で迎えていました。100歳になってもまだ車を運転している老人もいました。日本人のようにやわではありませんよ」。と手厳しい。
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